がら枕時計を六時半にかけて、ねじを巻いた。それからしばらく顔を見あったあと、今度は次郎が手をのばして電燈のスイッチをひねった。しかし、いつも十時過ぎに寝るのを、今夜は九時にならないうちに寝たので、ちょっと寝つかれなかった。
「あすは落着いてやるんだよ。」
「うん。」
「むずかしい問題があったら、あとまわしにして、出来るのからさきにやる方がいいぜ。」
「うん。」
そんなようなことをしばらく話して、二人は眼をつぶった。が、やはり眠れなかった。二人はしばらくは代る代る眼をあけ、闇《やみ》をすかして、そっと相手をのぞいたりしていたが、夜具のけはいで、おたがいに相手がまだ眠っていないのがわかると、ついまた言葉を交すのだった。
話が、いつの間にか、今度来る母のことになった。恭一も、もうその話をお祖母さんに聞いていたのである。
「どんな人だい。」
「肥った人さ。大きいえくぼがあるんたぜ」
「次郎ちゃんを可愛がるかい。」
「うむ。――だけど、よくはわからないや。亡くなった母さんとは、まるっきりちがった顔だもの。」
「次郎ちゃんは、もうその人に母さんって言ってるんかい。」
「ああ、きまりが悪かったけ
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