少年次郎」――それが、つまり、この篇の主題なのである。
 第一部において、彼の幸不幸を決定したものは、主としてその環境であった。そして、彼はその環境に対して、いつも、自然児的、本能的、主我的な闘いを闘って来たのである。だが、第二部においては、彼は徐々に彼自身の内部に眼を向けはじめ、そこに、周囲から与えられる幸福以上の何ものかを、探し求めようとしている。かくて彼の闘いは、次第に、理性的、意志的、道義的になって行くのである。

     *

 では、かような変化が、彼にどうして起ったか。それはいろいろなことが考えられるであろう。年齢か、環境か、教育か、愛か、運命か、人間共通の自然か、そもそもまた、そうしたことのすべてか。それについては、本篇に描かれた次郎の生活の実際に即して、読者と共に考えて行くことにしたいと思う。

  昭和十七年五月五日[#地から2字上げ]湖人生



底本:「下村湖人全集 第一巻」池田書店
   1965(昭和40)年7月10日発行
※「黒+犬」は、「默」で入力しました。
入力:tatsuki
校正:松永正敏
2005年12月9日作成
青空文庫作成ファイル:
このフ
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