へだてての対話、そこまで行くと、彼の足どりはやにわに早くなった。
彼は、しかしそれからまだ一丁とは行かないうちに、ふと、何かにぶっつかったように立ちどまった。そして、すぐまた歩き出したが、その一歩一歩は何かにひっかかってでもいるかのようにのろかった。彼は、これまで彼の心にかつて浮かんだことのない、ある妙な考えに捉われはじめていたのである。
(自分がきょう朝倉先生を知ることが出来たのは、室崎のおかげだ。朝倉先生は彼を無慈悲だと言ったが、その無慈悲な彼が、自分をあのりっぱな先生に結びつけてくれたのだ。)
これは次郎にとって、たしかに大きな驚きの種であった。が、彼の驚きは、ただそれだけではなかった。
彼はまた考えた。
(室崎が自分に無法な言いがかりをしたのは、お鶴のためだった。そして、お鶴をつれて学校のそばを通ったのはお浜だった。お浜はなぜ学校のそばを通る気になったのか。それは自分の乳母やだったからだ。そうしてみると、自分を今日朝倉先生に結びつけてくれたのは、ほんとうは乳母やだったということになる。)
彼はそこまで考えて、世の中というものは実に不思議なものだと思った。「めぐり合わせ」
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