思わん。だが、室崎の下級生に対する無慈悲な態度が、その理由の一つであったことに、間違いないだろう。講堂の額は、ただの飾りではないぞ。大慈悲を起し人の為になるべきこと、――君は、もう四年以上も、それを見つづけて来ているんではないか。校長が訓話のたびに慈悲心を説かれるのを、君は何と聞いて来たんだ。……ねえ、室崎、君は、校長が口で説かれるとおりの慈悲の人であったればこそ、今日まで無事に学校にいられたんだぞ。先生たちのうちに、誰ひとり君を弁護する者がなかった時でも、校長だけは、頑として君の退学処分を承知されなかったんだ。あんな生徒であればこそ見放してしまってはかわいそうだ、と言われてね。校長のその気持が少しでもわかったら、自分がもっと真面目になるのはむろんのこと、下級生にだってもう少しは人間らしい接し方がありそうなものだ。君は、元来、それほどのわからずやでもないはずだがね。」
朝倉先生の言葉は、切々《せつせつ》として、はたで聞いている次郎の胸にも、深くしみていった。
「じゃあもういい。もう間もなく午後の時間だ。二人とも、これを縁に仲よくせい。それも大慈悲の一つのあらわれだ。……それから、今日
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