いって、彼が「卑怯者」で「ごろつき」であることが、次郎の言うとおりであるかぎり、次郎が決死的になればなるほど、彼としては、始末がつけにくくなるのであった。
 だが、彼にとって何という仕合わせなことか、――たしかにこの場合に限っては、彼もそれでほっとしたにちがいないと思うが――そのせっぱつまった場合に、ひょっくり校内巡視の先生がやって来たのである。
 巡視は当番制で、ほとんど大ていの先生に割当てられていた。その日の当番は朝倉先生だった。朝倉先生は、尊敬に値すると噂されている先生の一人だったが、一年の教室に出ないので、次郎は、まだ、しみじみとその顔を見たことがなかった。
 先生がやって来たのは、次郎が三つボタンに対して最後の罵声をあびせ終って、まだ三十秒とはたたないころだった。
 それを最初に見つけたのは、三つボタンだった。それは、先生が次郎のうしろの方からやって来たからである。
 先生は、ほんのちょっと、次郎の一間ほどうしろに立ちどまって、二人の様子を見た。それから、默って二人の横に立った。
 三つボタンは、もうその時には、すっかりうなだれていた。しかし、次郎はあくまで身構えをくずさなか
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