る。
 もっとも、生徒間の噂によると、校内に二人や三人は、尊敬に値する先生がいないでもないらしかった。また、入学式の時に、彼が校長からうけた印象も、まだすっかり消えていたわけではなかった。しかし、そうした先生たちは、次郎たちとはまるでべつの世界に住んでいるようなもので、めったにその顔をのぞくことさえ出来ないのだった。次郎は、そのために、中学校というところは、小学校にくらべてずっと奥行があるような気もしたが、またいやに不便なところのようにも思った。
 とにかく、このことは、彼が中学校の先生にかけていた期待が大きかっただけに、彼をこのうえもなく淋しがらせた。そして、ある先生の授業のおりなどは、その時間じゅう、小学校の教室で権田原先生に教わっていた頃のことを思いうかべて、筆記帳にその似顔をいくつも書き並べていたことさえあった。しかし、一ヵ月、二ヵ月とたつうちに、中学校というところは、どうせそうしたものだ、と諦めるようになり、その淋しさも、いつとはなしにうすらいで行ったのだった。
 諦めるといえば、彼は家庭でも、お芳に愛してもらうことを、もうすっかり諦めていた。同時に、お祖母さんに対しても、こ
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