口の近くに向きあって立っているのが見えた。その一人は三つボタンであり、もう一人は最初に演説した生徒だった。
 次郎は、三つボタンが自分を追っかけるのを、演説した生徒がとめているんだな、と思いながら、足を早めた。
 次郎が本校舎の前まで来ると、ちょうど職員会議が終ったところらしく、先生たちがぞろぞろと玄関から出て来るところだった。彼は先生たちに顔を見られるのがいやだったので、校舎の陰にかくれて、人影の見えなくなるのを待つことにした。
 その間に、彼は、自分の着物――制服が出来るまで和服に袴《はかま》だった――が破けていないかをしらべてみた。不思議にどこにも大した破損はなかった。ただ袴の右わきに二寸ばかりの綻びがあるだけだった。時間割をうつすために持って来ていた手帳と、父に買ってもらった蟇口とを懐に入れていたが、それらは無事だった。
 肩や腿《もも》のへんに二三ヵ所|鈍痛《どんつう》が感じられ出したが、次郎はほとんどそれを気にしなかった。彼が最も気にしたのは、頬がはれぼったく感ずることだったが、手でさわってみると、さほどでもないらしいので安心した。
(これなら大丈夫、自家《うち》で気がつく
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