唯今より、二年以上の生徒と、新入学生との対面式を行う。」
 と言った。
 対面式は、べつに面倒なものではなかった。一年が右に、四年五年が左に、それぞれ向きをかえ、二年三年はそのままで、体操の先生の号令で、同時に敬礼をしあうだけだった。しかし、次郎の気持をいよいよ不愉快にしたのは、すぐ眼の前の五年生が、号令では頭を下げないで、一年生が顔をあげた頃になって、やっとばらばらに、礼を返したことだった。しかも、その顔付は、礼を返しているというよりも、あざ笑っているといった方が適当であった。
 対面式がすむと、校長の始業式の訓話が始まった。まず新入生の方を向いて、上級生に兄事する心得を説いたが、それはほんの二三分で、校長の顔はいつのまにか五年生の方を向いていた。顔が五年生の方に向くと同時に、言葉の調子も高くなり、その眼付も光って来た。そして、
「どんなわずかな力でも、それを不正なことに使ってはならない。不正なことというのは慈悲心のない行いじゃ。武士道におくれをとらないというのも、慈悲心が内にみなぎっていてはじめて出来ることで、それがなくては、武士道も何もあったものではない。よろしいか。本校の生徒は
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