彼の思いもよらないことだったのである。
権田原先生は、彼のまごついている眼を見|据《す》えながら、
「お前は多分、青年たちになぐられたお前の友だちや、その姉さんのために、仇を討ってやったつもりでいるんだろう。」
次郎は、うっかり「そうです」と答えるところだった。ところが、権田原先生は急に言葉の調子を強めて言った。
「だが、それもうそだ。お前の本心はそうじゃなかったはずだ。」
これも次郎には意外だった。今度は、あまりに当然だと思っていたことを否定されたのが、意外だったのである。
「よく考えてみるんだ。」
権田原先生はそう言って、顎鬚をむしるのをやめ、少し体を乗り出すようにして次郎を見つめた。次郎には、しかし、何を考えていいのかさっぱりわからなかった。彼は、少し腹が立つような気もし、また、何か知ら、うっかり出来ないような気もして、ただおし默っていた。すると、権田原先生がまた言った。
「考えてもわからんかね。じゃあ、先生が言ってやろう。お前はこのごろ何かむしゃくしゃしている。それで、つい、あばれてみたくなっただけなんだよ。ね、そうだろう。」
そう言った権田原先生の眼は笑っていた。次
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