いうこと、また、次郎に対しても愛情を感じないわけではないが、ついそんな事情から、しだいに気持が離れて行くような結果になり、次郎本人に対しては無論のこと、俊亮に対しても心苦しく思っているということなどを、ぼつぼつもらしていたのである。
 で、大巻一家、ことに運平老と徹太郎の二人は、お芳以上にそのことを心配して、日曜ごとに次郎が訪ねて来るのを待ち、ついにその姿が見えないと、翌日は徹太郎がわざわざ本田の家に寄って、それとなく様子をさぐって来るといったふうであった。
 しかし、運平老は、次郎が訪ねて来さえすれば、もうそれだけで嬉しくなってしまったというふうに見え、眼をぱちくりさして、ひょうきんなことを言い出すし、徹太郎は徹太郎で、運平老の言葉尻をとらえたり、それに調子を合わせたりして、次郎をすぐ愉快な空気の中にまきこんでしまうのであった。そして、多少でも次郎が何かにこだわるようなふうが見えると、運平老はすぐ彼に竹刀を握らせるし、徹太郎だと、登山の話をしたり、彼を田圃《たんぼ》につれ出してひっぱりまわしたりするのだった。
 登山というと、徹太郎が、約束どおり、恭一と次郎とをつれて山に寝たことも何
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