りと言いきかせたこともあった。しかし、次郎はその時も、変に真面目くさった顔をして答えた。
「でも、父さん、僕正直になる方がいいんでしょう。」
これには俊亮もあっけにとられて、つい、突っ放すように言った。
「そんなふうでは、もう誰にも可愛がってもらえないよ。」
すると次郎は、急に立ちどまって、じっと俊亮の顔を見つめていたが、
「僕、人に可愛がってもらうことなんか、きらいになっちゃったさ。」
と吐き出すように言い、さっさと一人で先に帰ってしまったものである。
お芳に対しては、彼は、まるで赤の他人に対するような冷淡さを示した。自分の方から言葉をかけることなどほとんどなく、お芳に何か言われても、極めてそっけない返事をするだけだった。そして俊三がお芳の近くにいるかぎり、彼はつとめてその場をさけようとするかのようであった。
彼の相手はいつも恭一だけだった。恭一と二人きりだと、彼の様子はほとんど以前と変りがなかった。ただ、おりおり、祖母や母に対する自分の態度の変化を誇るような口ぶりを、それとなく洩《も》らすことがあった。そして恭一がそれについて少しでも彼に忠告めいたことを言い出すと、彼はす
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