た。誰の様子にもべつに変ったところはなく、ただほんの二三秒間沈默がつづいただけだったが、その沈默の間、これまでとはちがった、固《かた》い空気が、急にその場を支配したように彼は感じたのである。
「わかんないか。そいつぁ、次郎君、少しどうかしているぞ。……しかし、まあいいや。きょうは恭一君がお祖父さんの味方らしいから、名画が一枚出来たことにしておこう。」
 徹太郎はそう言って、大きく笑った。運平老も笑った。そして肩をつんといからしながら、
「誰が何と言おうと、あれだけはわしの近来の傑作じゃ。その証拠には、わしは二人がいつ座敷にはいって来たかも知らないで、無心に筆を運んでいたんじゃ。」
 それはいかにも変な論理だった。しかし、もう徹太郎には、それを攻撃の材料にする気はなかった。そして絵の話はそれでけりがついた。お祖母さんは、さっきから気乗りのしない顔をしてふたりの話をきいていたが、茶棚の置時計に眼をやって、
「おやもう十一時だよ。ご馳走は何にしようかね。」
「さあ、なるだけうまいものがいいですね。蒲鉾《かまぼこ》なら、僕、町から買って来て、戸棚にしまっておいたんです。」
「今日は大堀が干《ほ
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