いて、餅菓子に手をのばしながら、
「恭一君、お祖父さんの説明にだまされちゃいかんぞ。説明つきの絵なんて、元来印刷物より外にはないはずだからな。」
「けしからんことを言う。水彩画や油画こそ、絵全体が説明ではないか。わしの描く墨絵には、一点の説明もありゃせん。」
「そのかわり、口で説明するんでしょう。」
「そりゃあ、素人には一応の説明をしてやらんと、絵の深さというものがわからん。説明してやっても、お前のような低能には、結局わからんがな。」
「また低能か。まあそこいらで負けときましょう。……ところで、どうだい、恭一君、君にはほんとうのところ、あの絵が高い崖に生えている蘭のように思えたのかい。」
「はじめはそんな気がしなかったんです。だけどお祖父さんの話を聞いているうちに、何だか高い崖のように思えて来ました。」
恭一はすこぶる真面目だった。
「そうれ、どうじゃ。」
と、運平老は得意そうに、
「恭一君は素直じゃから、話せばわかるんじゃ。」
「話せばわかるんで、話さなかったらわかりますまい。」
「いいや、素直な心があればわかるんじゃ。恭一君のような素直な心で、少し絵になれてさえ来ると、わしの話
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