たが、すぐまた眼を伏せてしまった。
「牛肉の鋤焼《すきやき》かな。……そう、それがよかろう。みんなで、つっつけるからな。……恭一、お前、肉屋まで走って行って来ないか。」
 俊亮は愉快そうにそう言って、財布から五円札を一枚とり出し、それを机の上にほうりなげた。
「どのぐらい買って来るんです?」
 恭一は、急に元気らしく、五円札をつかんだ。
「食べたいだけ買って来るさ。……二斤もあればいいかな。」
 恭一はすぐ部屋を出た。しかし、梯子段のところまで行くと、ふりかえって言った。
「次郎ちゃんも一緒に行かないか。」
 その時、次郎は、俊亮に默って頭をなでてもらっているところだった。恭一にそう声をかけられると、彼はあわてたように、
「うん、行くよ。」
 と、とん狂《きょう》に答えて、急いで俊亮のそばをすりぬけた。
 俊亮は微笑した。次郎はあかい顔をして、恭一のあとを追った。
 二人が牛肉を買って来ると、めったに台所のことに口を出したことのない俊亮が、めずらしく、あれこれと指図《さしず》してお芳に鋤焼の準備《じゅんび》をさしていた。俊三も、はしゃぎきって、お芳といっしょに、台所から茶の間に物を運ん
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