二名で、十五名の受験者中、都合六名が合格したので、他校に比べて、結果は非常にいい方だった。もっとも、六名が三名になっても、決してはずれっこない、と思われていた次郎が失敗したのには、学校側としても非常に残念だったらしく、しばらくは、どの先生も次郎の顔さえ見ると、
「惜しかったなあ。」
と言った。
ただ、何とも言わなかったのは、権田原先生だけだった。先生は、次郎に対してだけでなく、どの児童に対しても、合宿を引きあげて以来、試験の成績のことなど忘れたような顔をしていた。次郎には妙にそれが嬉しかった。そして、何かといえば自分を引きあいに出して、入学試験の話をしだす先生たちや、児童たちがうるさくてならなかった。
入学試験の失敗にからんで、もっと大きな問題になったのは、次郎が四月から町の小学校に転ずるか、あるいは、もう一年正木の家に厄介《やっかい》になるか、ということであった。
これについては、俊亮と正木の老夫婦とが、いろいろ首をひねったあげく、一応、お芳の考えを訊いてみたら、ということになった。ところが、お芳にはまるで自分の考えというものがなかった。彼女は、ただ、「皆さんでおよろしいよう
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