おぎょう》らしく言った。
「僕たちに、母さんが来るんだってさ。」
「なあんだ、そうか。」
 と次郎は、それで何もかもわかったという顔をした。恭一は、しかし、何かにうたれたように俊三の顔をみつめた。
「え? いつ? いつ来るんだい?」
「あさっての晩だって。」
「ほんと? 父さんがそう言ったんかい。」
「ううん、お祖母さんにきいたよ。」
 恭一は次郎の顔を見た。次郎は、しかし、母が来るのはあたりまえだ、といったような顔をしていた。
「お祖母さんはね、――」
 と、俊三はまた、声をひめて、
「そんな人、来なくてもいいんだけど、正木のお祖父さんがそう言うから仕方がないって、言ってたよ。」
 今度は、次郎が眼を光らせて、恭一を見た。恭一は非常に複雑《ふくざつ》な表情をして、次郎と俊三とを見くらべた。三人は、それっきりおたがいに顔ばかり見合っていたが、恭一が、しばらくして、
「俊ちゃんは、どう? 母さんが来る方がいい? 来ない方がいい?」
「僕、どっちでもいいや。……恭ちゃんは?」
「う……うむ……」
 と恭一は妙に口ごもって、
「僕だって、どっちでもいいさ。」
「次郎ちゃんは?」
 と、俊三は
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