をちぢめた。が、しばらくたつと、顔をかくしたまま息づまるように言った。
「僕、悪かったんだよ。……ゆうべ、次郎ちゃんにいろんなことを訊《き》いたの……悪かったんだよ。」
 二人は、それからかなり永いこと同じ姿勢《しせい》でいた。
 しかし、そのうちに次郎もやっとあきらめたらしく、恭一の蒲団《ふとん》から身を起して、校服のまま自分の寝床にはいった。そして、二人共、さすがに疲れていたらしく、権田原先生がたずねて来て俊亮と階下で話していたのも知らないで、夕方まで眠った。

    九 靴

 次郎は、案外悪びれずに、翌日の口頭試験や体格検査をうけた。しかし、ほかの受験者たちが、ちょいちょい昨日の算術の試験について話しあっているのを、耳にはさんだりしているうちに、自分の駄目なことが、いよいよはっきりして来た。
 彼は、くやしいというよりも、何か気ぬけがしたようなふうだった。
 彼にとって何よりもつらかったのは、正木に帰って不成績を報告することだった。で、万一に望みをかけて、及第の発表をまって帰ろうかとも考えた。しかし、いよいよ受からなかった場合のことを考えると、本田に残っている気にはなおさらな
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