とが出来ない、ということが、もし二人の場合にもあてはまるならば、二人は、何という呪《のろ》われた星の下に生まれあわせたものだったろう。
時計は容赦《ようしゃ》なく三分、五分と進んで、もう十一時を過ぎてしまった。お祖母さんはやはり動かない。次郎は何かをその頭になげつけてやりたいような衝動《しょうどう》を感じた。また、三四年まえに、お祖母さんが自分にかくしてしまいこんでいた羊羹の折箱を、そっと盗み出して、裏の畑で存分にふみつけてやったことを思い出し、何か武者振《むしゃぶるい》いのようなものを全身に感じた。彼は、しかし、さすがに、もうそうした乱暴なまねをするまでに、自分を忘れることが出来なかった。それに、彼のまえには、お祖母さんのほかに恭一がいた。そのつっ伏している姿は、お祖母さんのそれとはまるでべつな意味をもって、彼の眼にうつった。それは、彼の目には神聖なもののようにさえ思えて来たのである。
彼はいきなり立ちあがって便所に行った。そして帰って来ると、すぐふとんを頭からかぶって、ねた。電燈はつけたままだったし、お祖母さんの姿勢《しせい》は、便所に立つまえとはいくぶんちがっていたが、やはり
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