はまた苦笑しながら、
「親類仲でそうこだわることもありますまい。それに、こちらのことを気にかけてのことらしいのですから。」
「こちらのこと? すると何かい、こちらのことで何か相談がある、と書いて来ているんだね。」
 と、お祖母さんは、何か不安らしい眼をして、じろじろと手紙に眼をやった。
「そうらしく思われます。ご覧になりたけりゃ、ご覧下すってもいいんです。」
 俊亮は、渋い顔をしながら、正木からの手紙をぬきとって、お祖母さんの方につき出した。
「べつに、わたしが見なけりゃならん、ということもないのだけれど……」
 お祖母さんは、そう言いながら、手をひろげて、念入りに読みだした。しかし「委細《いさい》は拝眉《はいび》の上」とあるきりで、はっきりしたことは何も書いてなかった。ただ「次郎の行末とも、自然関係ある儀に付、云々《うんぬん》」という文句だけが、強くお祖母さんの眼を刺戟した。
 俊亮は、お祖母さんに構わず立ち上った。
「夕方までに行けばいいのなら、お午飯《ひる》でもすましてからにしたら、どうだえ。手紙を見たからって、そういそいで行くこともあるまいじゃないかね。」
 お祖母さんは、もう一度、読みかえしていた手紙を膝の上に置いて、俊亮を見た。俊亮が出かける前にもっとよく話し合っておきたい、というのがその肚《はら》らしかった。俊亮は、しかし、
「日も短いし、早く行って、早く帰った方がいいんです。」
 と、すぐ立ち上って次の間の箪笥《たんす》の抽斗《ひきだし》から自分で羽織を出しかけた。
 次郎は俊三と肩を組んで元気よく二階からおりて来た。そのあとから恭一もついて来た。
「お祖母さん、次郎ちゃんはもう帰るんだってさあ、まだ休みが二日もあるのに。」
 俊三が訴えるように言った。
 お祖母さんは、しかし、それには答えないで、次郎のにこにこしている顔を、憎らしそうに見ながら、
「お前は正木へ行くのが、そんなに嬉しいのかえ。」
 次郎の笑顔は、すぐ消えた。彼は默って次の間から出て来た父の顔を見上げた。
「何か、お土産になるものはありませんかね。」
 俊亮は、その場の様子に気がついていないかのように、お祖母さんに言った。
「何もありませんよ。」
 と、お祖母さんは、極めてそっけない。
「じゃあ、次郎、店に行って、壜詰《びんずめ》を三本ほど結《ゆわ》えてもらっておいで。」
 次郎はす
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