講じたか。それは彼らに任しておいて、私は、読者と共に、早速次郎のあとをつけてみることにしたい。
*
実を言うと、次郎はみんなが心配するほど危険な場所に行っていたわけではなかったのである。
彼は、門口《かどぐち》を出ると母屋と土蔵との間の、かびくさい路地に這入って、暫くそこに佇《たたず》んだ。それから路を更に奥にぬけて、庭の築山のかげに出た。彼はそこで、永いこと寒い風にさらされながら、座敷の様子を窺っていたが、全く人の気配がないと見て、思い切って縁側から上って行った。そして、次の間の、客用の夜具を入れてある押入をあけて、すばやくその中にもぐりこんでしまった。
絹夜具の膚触《はだざわ》りが、いやに冷たくて気味が悪かった。おまけに、皹《ひび》の切れた手足がそれに擦れるたびにばりばりと異様な音を立てるので、彼はびくびくした。
夜具にくるまりながら、内からそっと襖《ふすま》を締めるのは、次郎にとって、かなり骨の折れることだった。が、どうなりそれをやり了《おお》せると、彼はなるだけ体を動かさない工夫をして、遠くの物音に聴耳《ききみみ》を立てた。おりおり男衆の騒いでいるらしい声
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