にら》みのお兼にくらべて、ふっくらした頬とくるくるした眼をもったお鶴の方が、より大きな魅力であったことも否《いな》みがたい事実であった。
 ところで、次郎にとって、ここに一つの悲しむべきことがあった。それはお鶴のふっくらした左頬に、形も大きさも、お玉杓子《たまじゃくし》そっくりなあざが一つくっついていたことである。次郎はいつもそれが気になって仕方がなかった。その日も、ままごとに厭くと、お兼にくるりと尻を向けてお鶴と差向いになったが、その時、早速眼についたのがそのお玉杓子であった。
 お鶴は、次郎のそんな仕草《しぐさ》にはちっとも気がつかないで、相変らず草の葉を刻《きざ》んでは、せっせとそれをブリキ罐の中にためこんでいたが、永いこと陽に照らされて、ピンク色に染まったその頬の上に、鮮かに浮き出したお玉杓子が、次郎の眼には、いかにも血がかよって動いているように見えたのである。
 次郎は変に心が落ちつかなくなった。そして、しばらくの間は、むずむずした気分で、それに見入っていた。そのうちに彼の右手の人差指がいつの間にかそろそろと伸びていって、こわいものにでも触《ふ》れるように、そっとお鶴の頬をか
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