の愛情は、もうすっかり恭一から次郎の方へ移ってしまっていたのである。
お民は、次郎が次男坊なためか、或いはお浜が言ったように、実際猿みたいな顔をしていたためなのか、恭一を預けていた頃にくらべて何かにつけ冷淡だった。お浜にはそれが癪だった。そして、それがかえって彼女の次郎に対する愛着を増す原因のひとつでもあったのである。
ある日、お浜は次郎の大きくなったのを、お民に見せたいと思って、しばらくぶりでやって来た。するといきなりこんな会話が始まった。
お民――「おかげで、お猿さんも随分大きくなったわね。」
お浜――「まあ、お猿さんですって?」
お民――「そう言っちゃ、いけなかったのかい。」
お浜――「だって、自分の御子様じゃございませんか。」
お民――「でも、お猿さんって言うのは、お前がつけてくれた名だっていうじゃないの。ちゃんと婆さんに聞いて知っているのよ。」
お浜――「あの時は、あの時ですわ。いつまでもそんな……」
お民――「少しは人間らしい顔に見えて来たと、お言いなのかい。」
ぉ浜――「奥さんたち、わたし、くやしいっ。」
お民――「おや、泣いているの、ついからかってみたくなったのだよ
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