愛ゆくなるさ。」
「あんなお猿さんみたいな顔でもかい。」
「およしったら。ほんとに聞えたら知らないよ。」
「聞えたら、聞えたでかまわないさ。」
「でも、それじゃ、何もかも駄目になるじゃないかね、第一、恭さんにも一生逢えなくなるよ。それでもいいのかい。」
「ああ、ああ、癪でも、やっぱり預ることにしようかね。」
「そうおし、飯米のこともあるしね。」
「また飯米のことかい。よしておくれよ。あたしゃ、恭さんが可愛いばっかりに、あんな猿みたいな赤ちゃんでも、預ってみようというんだよ。」
「おやおや、えらいご奮発《ふんぱつ》だね。でも、預る気になってくれて、わたしも奥さんに申訳が立つというわけさ、……どうれ、また気が変らないうちに、奥さんに知らしてあげようか。」
 お糸婆さんは、にたにた笑いながら奥に行った。そして、お民にさんざん噛《か》みつかれながらも、ともかくもうまく話をまとめた。
 そこで次郎はその日から、恭一に代って、お浜の家に里子《さとご》に行くことになったわけなのである。
 だが、お浜が次郎をいつまでもお猿さん扱いにして嫌《きら》っていたかというと、そうではない。三四ヵ月もたつと、彼女
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