注《そそ》がれ、そして「永遠」に向かって流れて行く人生の相《すがた》を、彼の幼ない智恵の中に、そろそろと刻みはじめていたのである。

「次郎物語」は一先ずここで終る。しかし、次郎の一生がそれと同時に終りを告げたわけではむろんない。彼のほんとうの生活は、実はこれから始まるであろう。彼の家庭生活や学校生活はどう変って行くか。異性との交渉はどうなるか。そして、結局この大きな社会と彼はどう取っくみあって行くか。これらを詳《くわ》しく物語りたいのは、筆者の心からの願いである。しかし、次郎は今母に死別したばかりである。彼のこれからの生活を知っているものは神様だけしかない。で、もし何年か、何十年かの後に、この物語を読んだ誰かが、幸にして次郎と相|識《し》る機会を得、そして彼の生活に興味を覚えるとしたら、恐らくその人がこの物語のつづきを書いてくれるであろう。
[#改段]

    あとがき

 私は、これまでに、何冊かの本を書いたが、もし、一生のうちに一冊だけしか本が書けないものだとしたら、私は恐らくその一冊にこの「次郎物語」を選んだであろう。それほど私はこの本が書いてみたかったし、書いて置かなければ
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