?」
「まっ白だい。煙がくっついているんだろう。」
 次郎はそっと手で顔を触《さわ》ってみた。ぬるぬるしたものがくっついているような気がする。さほどひどくはないが、ぴりぴりした痛みを覚える。
「早く水で洗っておいでよ。」
 誠吉が言った。
 次郎は離室や座敷の方をそっとのぞいてから、池の水を両手で掬《すく》って、顔にもっていった。が、それと同時に彼は悲鳴に似た声をあげ、再び築山のかげに走って来た。彼の顔は、ところどころ鮪《まぐろ》の刺身のように真赤だった。誠吉は眼を皿のようにして立ちすくんだ。
 次郎は草の上に仰向けに寝ころんで、ふうふう息をした。顔全体から炎が吹き出しているような感じだが、どうすることも出来ない。彼はただ手足をばたばたさして苦痛をこらえた。誠吉は全身をぶるぶるふるわせながら、しばらくそれを見ていたが、急に声を立てて泣き出した。そしていっさんにどこかに走って行った。
 間もなくお延が子供たちと一緒に走って来たが、次郎の顔を見ると、
「あれえっ。」
 と、けたたましい叫び声をあげた。
 つづいて雇人たちがどやどやとやって来た。すこしおくれて謙蔵が来た。最後にお祖父さんが来
前へ 次へ
全332ページ中296ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
下村 湖人 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング