ったって、何だい。久ちゃんだって、源ちゃんだって、みんな落書きしてらあ。」
 誠吉は、それはそうだ、と思った。しかしそう思っただけで、心はやはり落着かなかった。
「あやまらないと、僕母さんにも叱られるんだよ。」
「だって、叔母さん、まだ知らないだろう。」
「もう知ってるかも知れないよ。」
「叔母さんにも、言いつけるだろうか、あいつ。」
 誠吉は、次郎の「あいつ」と言ったのに、眼を見張った。次郎は、しかし、平気で言いつづけた。
「僕、あいつ、きらいだい。いつも叔母さんにばかり誠ちゃんを叱らすんだもの。」
 二人は、しばらく默りこんだ。次郎はやがて、何かふと思いついたように、
「誠ちゃんは、あいつを、いつも父さんって言うんだろう?」
「…………」
 誠吉は、いよいよ変な顔をして、次郎を見た。彼は、正木で生まれ正木で育ったので、従兄弟たちと一緒に、少しの無理もなく、謙蔵を父さんと呼びならわして来ている。彼が実の父でないことを、はっきり知っている現在でも、それだけは、彼にとって、ちっとも不自然には感じられないのである。
「父さんでもない人を、父さんなんていう馬鹿があるもんか。」
 次郎は、平気
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