の白壁に鉛筆で落書きをしているところを謙蔵に見つかって、叱られたというのである。恐らくそれは、謙蔵が通りがかりに一寸注意した程度のものだろうと思われるが、かりそめにも、謙蔵に直接叱言をくったということは、誠吉にとって気味のわるいことだったに相違ない。次郎もむろん無関心では居れなかった。彼は、彼の頭に映っている謙蔵と、目の前にしょんぼり立って泣いている誠吉とを結びつけて考えながら、一種の義憤《ぎふん》にかられて来た。しかし、自分が全然知りもしないことを、いつもの通り誠吉のために弁解するのも変だ。また、かりに弁解するとしても、どう弁解すればいいのか、誰のところに持っていけばいいのか。これまでは叱り手が必すお延だったので、言い出しやすかったが、謙蔵に直接では、すこし勝手がわるい。――次郎はそんなことを考えているうちに、ますます謙蔵が悪い人のように思われて来た。
「次郎ちゃん、あやまっておくれよ。」
誠吉は、口に指をくわえながら言った。次郎は、しかし、誠吉の弱々しい言葉をきくと、一層力みかえった。
「何だい? あやまることなんか、あるもんか。」
「だって、僕、見つかったんだもの。」
「見つか
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