たり、雲をながめたり、風の音や鳥の声に耳をかたむけたりすることもあった。ある日など、大川の土堤の斜面にねころんで、赤い蟹《かに》が芦《あし》の茎を上ったり下ったりするのを、一時間あまりも一人で眺めていて、自分でも不思議に思ったことがある。しかし、あとで考えると、そんな時には、大てい、校番室を思い出し、お浜や、弥作爺さんや、お鶴や、お兼や、勘作や、それからそれへと、正木の家に来るまでのことを、一巡思い起していたことに気づくのである。
 彼は、以前の悪癖がなおらないで、このごろでもしばしば生きものを殺した。しかし、殺したあとでは、いつも変に気味わるい感じになるのであった。そんな時に、彼がよく思い出すのは村はずれの団栗《どんぐり》林だった。そこには小さな祠《ほこら》が祭られていたが、その祠の真うしろの、一番大きい団栗の幹に、大釘が五本ほど打ちこんであるのを、かつて彼は見たことがあった。村の人達の話では、誰かが人を呪って、その両眼と両耳と口とを利かなくしようとしたものだ、ということだった。なるほど、そう聞くと、釘の位置が、ちょうどそんなふうになっていた。次郎には、運命というようなものを考える力
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