いぐらいは、彼にも出来るようになったのである。
 しかし、次郎の新しい生活は、単にこうした方面ばかりではなかった。竜一とは毎日学校で顔を合わせるにもかかわらず、わざわざ葉書を書いて、自分が正木に来ていることを報じたりした。それが春子への通信を意味したことは、言うまでもない。また、恭一の仲よしであった真智子のお伽噺《とぎばなし》の本が一冊、どうしたはずみか、次郎の机の中にまぎれこんで正木に届けられていたのを、これも、学校では返さないで、わざわざ郵便で送り返した。これは真智子の返事をもらいたかったからであったことは、その後しばらく、日に一回の郵便配達があるのを、非常に注意して待っていたのでもわかる。むろん彼に、恋心というようなものが、すでに湧いていたわけではない。彼が郵便を愛したことは、お鶴からの年賀状を大切にしまいこんでいたことでもわかるし、また父や兄に、おりおり手紙をかいて、その返事が来ると、従兄弟たちの前で、声たかだかと読みあげたりするのでもわかる。しかし、春子や真智子からの郵便を待つ心に、ある特別の感情が伴なっていたことも、やはり否めない事実であった。
 彼はまた、一心に水を見つめ
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