屋ばかりだった。恭一と俊三とが机を並べている部屋は、ちょうど店の二階になっていた。そこは物置同様で、鉄格子の小窓がたった一つあいているきりだった。庭もあるにはあった。しかし、それは、隣家の苔だらけの土蔵で囲まれた、ほんの五六坪ほどのもので、そこからは、湿っぽい土の匂いが、たえず室内に流れて来た。次郎は、その匂いをかぐと、すぐ滅入りそうな気になるのだった。ことに、昼間でも真っ暗な、狭くるしい便所に行かなければならないのが、何よりもいやだった。正木の家でなら、もっと明るい、ゆとりのある便所がいくつもあったし、それに小用ぐらいなら、自由に野天で放つことも出来たのである。
このような陰気な家の中で、顔を合わせる本田のお祖母さんが、次郎にとって、いよいよ不愉快な存在になって来たことは、言うまでもない。家が手狭なだけにお祖母さんの言うこと、することが、始終彼の頭を刺戟した。一緒に食卓につくと、どんな好きなものでも、気持よく腹に納まらないような気がするのだった。
母の方は、しかし、訪ねるたびに、次第にやさしくなっていくように感じられた。気のせいかうす暗い部屋の中で見る母の顔に、何かしら、しっとり
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