するだけで、ほかの人たちは、いやに沈んだ顔をしていた。次の間は、これに反して、おそろしく賑やかだった。ただ、次郎だけは、いつも座敷の方の様子に気をとられていた。彼は、食うだけのものは、誰にも劣らず食ったが、みんなと一緒になってはしゃぐ気には、どうしてもなれなかった。
食事がすんで、お膳が下げられると、大人も子供も座敷に集まって、菱の実をかじった。尤も俊亮の前だけには、正木のお祖母さんの気づきで、小さなお盆に、燗《かん》徳利と、盃と、塩からのはいった小皿とが残して置かれた。しかし、俊亮は、一二度お祖母さんにお酌をして貰ったきり、ほとんど盃を手にしなかった。次郎は、何度も自分でついでやりたいと思ったが、きまりが悪くてとうとう手を出さなかった。
二升ほどもあった菱の実は、三四十分もたつと、うず高い殻の山になっていた。
「もう菱も、そろそろ出なくなります頃ね。」
お民は、淋しそうに、菱の殻に眼をやりながら、言った。
「これだけでも採《と》らせるのは、やっとだったよ。……でも、恭一や俊三が、これからはめったに食べられないだろうと思ってね。」と、正木のお祖母さんも、何だか心細そうであった。
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