は、しずかにそう言って、やはり腕組みをつづけていた。
 次郎は、一心に、父の様子を見守った。彼はこれまで、父に対してだけは、心からしみじみとした感じになれたのであるが、こうして祖母の前にかしこまりながら、しかも、どこかにゆとりのある態度で坐っている父の様子を見ると、悲しいような、嬉しいような、何とも言えない感じになっていくのだった。
「こないだから、すこし可笑《おか》しいとは思っていましたが、……ま……まさか、一周忌もすまないうちに、こ……こんな……」
 お祖母さんは、俊亮の前に突っ伏して、声をとぎらした。
「次郎、お前は階下《した》で遊んでおいで。」
 俊亮は、やはり腕組みをしたまま、わずかに顔を次郎の方にふり向けて言った。
 次郎はすぐ階下に降りたが、何だか気がかりで、梯子段の近くをうろうろしていた。そのうちにお民が二階にあがって行った。三人の話し声はいつまでも続いた。次郎は、祖母と母の泣き声にまじって、おりおり聞える父の簡単な、落着いた言葉に耳をそばだてたが、何を言っているのかは、少しもわからなかった。

    二八 売立

 大っぴらな売立が始ったのは、それから間もなくであっ
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