るなんてまた泣きついて来たって知らないよ。恭一にだって、これからはどんな事があっても逢わせるこっちゃない。」
 お民は、そう言ってぴしゃりと障子《しょうじ》をしめた。
「奥さん、そりゃあんまりです。あんまりです。」
 お浜はしめられた障子のそとでわめき立てた。
「何があんまりだよ。」
「あんまりですわ。やっと恭一さんを一年あまりもお育てしたところを、だしぬけに、今度の赤ちゃんのような、あんな……」
「あんな、何だえ。」と、また障子ががらりと開く。
「…………」
「はっきりお言い。」
「まあまあ、奥さん、わたしからお浜どんにはよう言って聞かせましょうで……」と、お糸婆さんが、やっとなだめにかかる。
「言って聞かせるもないもんだよ。年寄りのくせに、お浜にあいづちばかりうっていてさ。」
「へへへへ。」お糸婆さんは、お歯黒《はぐろ》のはげた歯をむき出して、変な笑いかたをする。
 その時、奥の方から赤ん坊の泣き声がきこえた。お民は障子をしめながら、二人をぐっと睨《ね》めつけて、おいて、その方に立って行く。
「どうせお前さんの思う通りにゃなりっこないよ。あきらめたらどうだね。」と、お糸婆さんはお浜
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