大きな裂傷《れっしょう》があって、血が背中や胸にいくすじも流れていた。彼が明るい電燈の下に、歯を食いしばった姿を表した時には、春子をはじめ、みんなが顔色を真っ青にしたほどだった。
 傷は竜一の父に二針ほど縫って貰った。春子は繃帯《ほうたい》をかけてやりながら、半ば独言《ひとりごと》のように言った。
「私、お母さんにすまないわ。傷が治るまで次郎ちゃんをお預りしようかしら。」
 次郎はそれを聞くと、眼を輝やかした。しかし、まだ繃帯を結び終らぬうちに、廊下にあわただしい足音がして、母のお民が診察室に顔を現した。そして次郎は間もなくつれて行かれた。

    二五 姉ちゃん

 次郎の頭に巻かれた繃帯は、学校じゅうの注目の焦《しょう》点になった。誰もそれを彼の敗北のしるしだと思う者はなかった。このごろ少し落目になっていた彼の勇名は、そのため完全に復活した。上級の子供たちまでが、学校の往き帰りに、彼に媚《こ》びるようなふうがあった。由夫とその仲間たちは、いつもびくびくして彼を避けることに苦心した。
 次郎は、しかし、みんなのそうした様子には、まるで無頓着《むとんちゃく》なような顔をしていた。彼は
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