んやとはしゃいだ。次郎はそのあいだにも、春子が早くやって来ればいいのに、と思っていた。
空が螺鈿《らでん》を鏤《ちりば》めたようになったころ、やっと春子がやって来た。次郎は、彼女が縁台に腰をかけた時、ほのかに化粧の匂いが闇を伝って来るのを感じた。
「蚊がつくわ。」
そう言って、彼女は、持っていた団扇で二人を煽《あお》いだ。次郎は、臥《ね》ていては悪いような気がして、斜めに体を起した。
「次郎ちゃん、帰りたくなったら、誰か送って行ってあげるわ。」
次郎は、春子が、来るとすぐそんなことを言い出したので、がっかりした。しかし、帰りたくないとは言いかねて、默って縁台を下りた。
「それとも、泊って行く? お母さんに叱られやしない?」
「僕帰るよ。」
次郎はそう答えるより外なかった。
「じゃ、誰かに送らせるわ。」
春子は、次郎の予期に反して、あっさりとしていた。
「一人でいいんだい。」
「いけないわ、由ちゃんの仲間が、まだそこいらに見張っているかも知れないのよ。あの子はしつっこいから。」
「僕、負けはしないよ。」
「勝ったって、負けたって、喧嘩する人、大嫌いだわ。」
「大嫌い」という言葉
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