。」
「卑怯だなあ。僕、負けるもんか。」
「そうだい。次郎ちゃんは強いんだい。僕、見に行ってやらあ。」
竜一までが立ち上った。
「およしったら、喧嘩なんかつまらないわ。……次郎ちゃん、ゆっくりしておいで。竜ちゃんと一緒に、夕飯をご馳走してあげるわ。」
次郎はまだこの家で飯を招《よ》ばれたことがなかった。子供にとって他人の家の食卓というものは、大きな魅力をもっているものだが、とりわけ次郎にとっては、そうであった。彼のいきり立った気分が、春子にそう言われて、急に柔《やわ》らぎかけた。しかし、すぐ坐りこむのも何だか恥ずかしかったので、彼は立ったままもじもじしていた。
「ね、いいでしょう、お母さんにおねがいしとくわ。」
「次郎ちゃん、ご飯たべていけよ。由ちゃんをなぐるのは、明日でもいいや。」
竜一も、友達を自分の家の食卓に迎える楽しさに胸を躍らせながら、次郎の手を引っぱった。
「明日になれば、由ちゃんだって、もう喧嘩なんかしたくなくなるわ。だから、今日は外に出ないことよ。なんなら、泊っていってもいいわ。」
次郎は由夫のことなんか、もうどうでもいいような気になって、すっかり落ちついてしま
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