うと思っていた恭一と俊三とが、妙なはずみから、まるで敵手でなくなってしまったので、いささか拍子ぬけの気持だった。しかし彼は、決してそれを残念だとは思わなかった。それどころか、二人を相手に、いくらかでも仲よく遊べることは、彼の家庭における生活を、今までよりもずっと楽しいものにした。
 恭一は、雑誌や、お伽噺《とぎばなし》の本などをお祖母さんに買って貰って、それを読むのが好きであったが、自分の読みふるしたものを、ちょいちょい次郎に与えた。それが次郎を喜ばしたのはいうまでもない。
 彼ははじめのうちは、挿画《さしえ》だけにしか興味を持たなかったが、次第に中味にも親しむようになり、時には、恭一と二人で寝ころびながら、お互に自分の読んだものを話しあうようなことがあった。その間に彼は、恭一のこまかな気分にふれて、いろいろのいい影響をうけた。
 彼と俊三との間は、それほどにしんみりしたものにはなれなかったが、庭や畑に出ると、二人はいつも仲よく遊んだ。俊三が、このごろ次郎に対して、ほとんど我儘を言わなくなったことが、いつも次郎を満足させた。そして、彼が外を飛び歩くことも、そのためにいくぶん少なくなって
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