いた土のうえに、仰向けに倒された。土埃で白ちゃけた頭が、橋の縁《ふち》から突き出している。一間下は、うすみどりの水草を浮かした濠《ほり》である。しかし次郎は、その間にも、相手の着物の裾を握ることを忘れていなかった。二人は少しもてあました。そして次郎の指を、一本一本こじ起こしにかかった。
 と、次郎は、やにわに両足で土を蹴って、自分の上半身を、わざと橋の縁からつき出した。
 重心は失われた。次郎の体は、さかさに落ちて行った。着物の裾を握られた二人が、そのあとにつづいた。水草と菱《ひし》の新芽とが、散々にみだれて、しぶきをあげ、渦を巻いた。
 橋の上では恭一と真智子と次郎の仲間たちとが、一列に並んで、青い顔をして下をのぞいた。
 三人共すぐ浮き上った。最初に岸にはい上ったのは次郎であった。着物の裾がぴったりと足に巻きついて、雫《しずく》を垂らしている。彼は、顔にくっついた水草を払いのけながら、あとからはい上って来る二人を、用心深く立って見ていた。
 すぶ濡れになった三人は、芦の若芽の中で、しばらく睨《にら》みあっていたが、もうどちらも手を出そうとはしなかった。
「覚えてろ。」
 相手の一人
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