る。
一六 土橋
次郎は、それ以来、学校の往復に俊三のお伴をすることを、断じて肯んじなかった。
そのことについて母が何と言おうと、彼はろくに返事もしなかった。朝になると、わざとのように、みんなのいるまえを通って、一人でさっさと学校に行った。帰りには、きまって道草を食った。ただ以前とちがったところは、夕飯の時間までには、不思議なほどきちんと帰って来ることだった。
しかも彼は、母や祖母に尻尾をおさえられるようなことをめったにしなくなった。彼は、父の前では相当喋りもし笑いもしたが、一たいに家庭では沈默がちであった。恭一や俊三に対してすら、自分の方から口を利くようなことはほとんどなかった。そして何かしら、すべてに自信あるもののごとく振舞った。それがお祖母さんの眼にはいよいよ憎らしく見えたのである。
お民は、さすがに、お祖母さんよりもいくらか物を深く考えた。しかし、考えれば考えるほど、次郎をどうあしらっていいのか、さっぱり見当がつかなくなって来た。そして、おりおり俊亮にしみじみと相談を持ちかけるのだった。
「今のままでいいんだよ。お前たちは、どうもあれを疑《うたぐ》り過ぎてい
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