も、彼の成績は決して悪い方ではなかった。五十幾人かの組で、彼はいつも五番以下には下らなかった。もし研一という、図抜けて優秀な子供さえいなかったら、彼が一番になるのも大してむずかしいことではなかったであろう。
もっとも、操行は大てい乙で、一度などは丙をつけられたこともあった。その時には、さすがの彼も、気がひけたとみえて、通信薄のその部分を指先で擦《す》り剥《は》がして、家に持って帰ったのだった。
それを見て、腹を立てたのは、母よりも、むしろ父であった。父はいきなり持っていた煙管《きせる》で次郎の頭をひどくなぐりつけた。
お浜は通信簿が渡される日には、きまって卵焼をこさえて、次郎を校番室に迎えた。しかし、そのおりの、彼女の顔付は、いつも、あまり愉快そうではなかった。
「恭ちゃんはいつも一番なのに、次郎ちゃんはどうしたんです。」
これが、次郎が卵焼を食べ終ったあと、きまってお浜の口をもれる小言であった。
この小言は、ふだんにもしばしば校番室で繰り返された。次郎は、最初のうちはすまないような気もしていたが、たび重なるにつれて、次第にうるさくなって来た。そして彼が校番室に出入することも
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