熕lの言語をするやうだと云はれたから、侍臣が、さやうです、三郎郎當[#「三郎郎當」に白丸傍点]/\/\と云ふのでありますと、諧謔したから、天子は、苦笑せられたとあります、しかし、鶴林玉露は俗本であるから、採るに足らぬと云ふなら、さきに引用しました鄭嵎の津陽門の詩中に、三郎紫笛弄煙月、怨如別鶴呼覊雌、玉奴琵琶龍香撥、倚歌促酒聲嬌悲とあるを見ても、明かで、玄宗皇帝は、笛が得意で、いつも、紫玉の笛を吹かれた、玉奴とは、楊貴妃のことで、琵琶が上手、其の構造は、贅澤を極めたもので、琵琶の撥は、龍香柏で作り、其の槽は、邏沙檀とある、邏沙檀とは、恐らく沙邏檀の誤であらうと思ふ、これならば、印度で、非常に珍重する蛇心檀「サルパ、サーラ、チヤンダナ」(〔Sarpa−sa_ra−candana〕)であつて、沙邏は心《サーラ》の音譯だと、吾輩は信ずる、いづれにしても、其の贅澤の程が推察せらるゝ次第であるが、しかし、大唐天子の贅澤である、かゝる位のことは怪むに足らない、この大唐天子の帝師となり、灌頂國師となり、勅によりて、或は雨を祈り、或は雨を止め、或は西蕃の寇を攘ひ、或は河北の賊の變を豫言し、玄宗皇帝より、
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