事へる宗教で、其の「アフラ」は、梵語の「アスラ」(Asura)と同一語根で、梵語の方では、阿修羅即ち非天と云ふ風に凶惡の神と云ふことに、後世では、變じて居るが、「ゼンド」語の方では、善神を云ふ方に、使用せられて居る、此の方が、「アスラ」又は、「アフラ」の本來の意義である、現に梵語でも、吠陀の文學には、「アスラ」即ち阿修羅を善き神と云ふ方に用ひた例があると記憶する、殊に「アフラ、マズダ」は、至大至善の神で、全知全能の神である、又精神界の光明の神である、この神に對して、Anro《アンロ》[#nは上ドット付き]−|mainyus《マークヌス》 と云ふ惡神が戰をして居る、此の惡神は、精神界の暗黒を代表する神で、世界は以上二神の爭鬪であると見るが、「マズデイズム」の見方で、聖賢が、世に出でゝ、善神を扶けて、惡神を退ける任務を有したもので、「ゾロアスター」も、其の一人である。
此の教は、其の根本の主義から云ふと、二元論であつて、かゝる思想は、悠古の時代から、「イラン」民族の中に存在したが、これを組織して、一の體系ある宗教とした人は、即ち「ゾロアスター」であつたことゝ信ずる、昔は、波斯で中々勢力あつた宗教で、西暦第七世紀の半に至るまでは、殆んど波斯の國教であつた、今でも、印度の西海岸に、孟買だとか、「ゾロダ」とか云ふ地方にある「パーシイ」は、拜火教徒と云ふが即ち、※[#「示+夭」、第3水準1−89−21]教の徒である、波斯自身にも、異教徒即ち「クエープル」の名の下に、此の信徒が殘つて居る。
此の「マスデイズム」を、基礎として、これに基督教と、佛教と、其の他の東洋思想とを合せ、融會し、合糅して西暦第三世紀の後半に波斯に於て、建設した新宗教は、即ち、末尼教である、西洋人の所謂「マニデイズム」(Manicheism)は、是れである、其の教祖は「マネース」又は、「マニ」と云つて、西暦二百四十年波斯に生れ、二百七十四年に死した、生存の歳月から云ふと、基督教と同じく、三十有餘歳に出でないが、教義の流布したことは、非常で、地中海の沿岸を席捲し、一時は、基督教の勢力を凌駕せん許りで、有名な「オーガスチン」なども、若い時代は、此の教徒であつたのでも判る、其の教旨は、前に申した通り、波斯在來の※[#「示+夭」、第3水準1−89−21]教を基礎としたものであるから、二元論で、善惡眞僞の二元は、假りに、
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