し立つるかもしれぬが、嫁にゆかうとする本人、又は其の兩親が承知の上との事ならば已むを得ぬことゝして引きさがるまでのことである、又財産にも必ずしも目をつけぬ、あればこの上ないことではあるが、あつたからとて、金錢は他人と云ふことであるから、親戚の女子が嫁に行つたさきが、財産家だからとて、自分が金に困つたとき、無心にゆけるものでもなし、いつたからとて、貸てくれると定つた譯でなく、親族つきあひの上から見て、一族の中に財産家があれば、體面上却つて瘠我慢をして、ない袖でも振らねばならぬことがあり、却つて迷惑することがある、だから親族どもは、婚姻のときは、必ずしも婿となる人の財産に目をつけぬ、又其の智識如何にも注意せぬ、婿に智識があつては無學の親戚どもは却つてこまる、平生から使用する言葉も違ふ、理想のおきどころが違ふから、下手すると、卑陋な言葉を自分がつかつて、御里が暴露する恐がある、第一、てんで話があはぬ、殊に古代印度の樣に、吠陀の智識は、或る一階級に限られて他の階級には窺ひ知ることすら出來ない國土ではなほさらである、して見ると一族の女子に容貌がよくて、若い女のすきさうな婿が出來ても、財産があつて
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