すと云ふことも、先づ一考を要する次第である、さればとて年齒もゆかず、世事にうとい女子の意見のみに任して、女子の好む人に嫁入らすと云ふことは甚だ危險千萬で、殊に女子の兩親に財産でもあると、これをあてに女子を誘ふものが少くない、かう愛情のない結婚は女子の將來にとりても甚だ危險である、此頃世間の新聞雜誌に喧傳せられて居る東京某名家の椿事なども世に傳ふるところだけでは眞相未だ判然せず、且つ其の中に散見する人々の中には自分の知己友人もあるからこゝに悉しくは述べることは出來ぬが察するところ、自殺せられた令孃の嫁に行つたさきは、相當の資産があつたなら已に出來たことゆゑ、令孃のおつかさんも或はこれを承諾[#「承諾」は底本では「承諸」]したかも知れない、又資産がなくて、裸一貫であつても、立派な人格力量があつて令孃の父たる方が存命であつたなら、無論進んでかの結婚を承認し場合によりては莫大な持參金を持たせて其の立身出世をたすけたことゝ思ふ、現に赤の他人でも父たる人によりて今までに引き立てられ、教育せられて立派な人になつた方々は鮮くないやうである、まして令孃のゆかれた先方は、以前から血を引いて居るとの話である
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