教へ、繪畫、舞踏まで仕込むは勿論、中には巴里の市中又は附近に別莊まで建てゝ兩親とも移つて來て、女子の教養に力を盡して居り、金にあかせて、衣裳をこしらへて、美しく上品に見えるやうにして居るが、氏素性は爭はれぬ、米國の女子は矢張り、米國の女子で金の力でときには歐洲の貴族と結婚はしても結局は甘く行かぬことは多い、姑と話して居る中に「アシユランス」と「アンシユランス」と間違ふて直されたり「エパタン」と云ふやうな市井の語をつかつて叱られたり、やれ衣裳のきこなしがなつて居らぬ、やれ靴が大きすぐるとか云ふて可愛さうに、することなすこと、小言を受けて結局は夫と頼む婿にも飽かれて捨てらるゝ小説が隨分ある、又紐育の十二富豪の隨一たる富豪の家の令孃が帝政時代に出た佛國の某公爵家に嫁入りして、種々の葛藤不和を家庭に起し、結局公爵と親族の一人との間に決鬪すらしたといふやうな實例は、現に十數年前あつた、自分は彼の地に居たとき、新聞で長い間に亙りて、其のいきさつを記述したから、自分は讀んで今もなほ記憶して居る、いづれの時代いづれの國でも、人情には變はりはない、だから親族どもの意見のみに任して門地ある家に女子を嫁入ら
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