父親の意見が勝つと、娘さんは大學出の秀才で、法學士か、工學士か、醫學士か、商學士か、さもなくば參謀の方に※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]はつた軍人か、なるべく鐵砲玉の中る虞の鮮くて、早く出世する軍人かであつて、氣品もあり教養もあり、働きもあるところへゆくが、ともすると、持參金か又は類似の贈與物がいることがある、親族の意見が勝つと今度は時あつて財産家の娘さんは無論持參金つきで、祖先の遺産を[#「遺産を」は底本では「遺薩を」]蕩盡した名家の公達へ嫁に往くことになり、農夫、商人の女は一躍して、夫の餘光で貴族の班に列することになるはめでたいことではあるが、さて往つて見ると如何に兩親の膝下で豫備教育をして居つても所謂畠水練で、さてとなると中々間に合はぬ、先方の親戚の人々と交はつて見ると趣味、態度、言語、技能についてはどことなく引けをとる、これに追隨して行くには、一苦勞である、日本のことはしらぬが米國の富豪が歐洲の貴族に自分の女子を嫁入りさそうとして苦心して居るさまは氣の毒のやうである、女子のしつけは佛國が一番發達して居るからと云つて、家庭教師に佛國人を傭入れ、佛蘭西語をならはせ、音樂を
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