から、なほさらのことゝ思ふ、また資産はなく、力量はなくても高い門地でもあつて、當人はともかく、祖先の中に、國家に對して勳功があつたと何人も認めるほどの名家であつたならば、たとひ父たる方がなく、母たる方が財産の點から多少の異議を申し立てゝも、已に双方の結婚は事實上出來たことではあるし、他から勸めて、これを承認さしたかも知れず又其の亡父の恩を受けた人々はかく取計ふは至當であると自分は思ふ、然るにこれらの條件の一だに具備せず、又具備して居つたかもしれないが、不幸にして兩親親族の認識さるゝ所とならなかつた男子を選んで己の夫とした女子は、たしかに、不仕合せであると自分は思ふ、

(四)[#「(四)」は縦中横]年頃の女子が嫁に行く以前に、一家の中に、これだけの心配があるが、さて嫁入らして見ると、女子の兩親は申すに及ばず、婿となつた方の兩親にも非常な心配がある、支那の諺に痴でなく聾でなくば、阿翁阿家とはなれないと云ふて居る、即ち莫迦でなく、つんぼでなくば、舅や姑になれないと云ふことである、是れはなみなみの人が云つた言でない、唐代の代宗皇帝の云はれたことで、恐多くも御天子樣の仰である、讀者も知つて居ら
前へ 次へ
全54ページ中17ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
榊 亮三郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング