《レイ》氣乃至寇賊をも顧慮せられずして、當時の世界の中で至高至大の文化を持つて居た支那の首都長安に於て、惠果阿闍梨から傳法大阿闍梨の灌頂を受けられて、當時の東洋諸國に於て最も隆盛を極めた密教を我が國に傳へられた御功績に對し、益々感謝景仰の念を増すばかりであります。惠果和上の師は不空金剛三藏で、不空金剛三藏の師は金剛智三藏であつたことは、諸君の已に熟知せらるゝ所でありますが、傳法大阿闍梨の位に登られた宗祖大師の法名は、遍照金剛即ち※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]イローチヤナ・※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]ヂラ(〔Va_irocana−Vajra〕)でありますから理智の相即圓融を表幟した法名で、實際、日本密教は、金剛、胎藏の二界を兼備した密教でありますから世界無比のものであることは申すまでもありませぬ。惠果和上が宗祖大師に期待し、また大師灌頂の齋會に參列した五百の大徳が宗祖大師に期待した所のものは、此の遍照金剛の法名でも判明する次第であります。
 本日の講演の題は、惠果阿闍梨の師の師、即ち、宗祖大師から遡りて、四代目の傳法大阿闍梨でありました「金剛智三藏と將軍米准那」とにつき
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