讀んだ一例です。准那の二字を「ヂユンナ」又は「ジユンナ」と發音しても、何の意義をも發見出來ぬとすれば、發音を變更して「セツダ」又は「ゼツダ」と讀むより外に讀方はありませぬ。然らば斯く讀みて、何等か意味が發見出來るかと申せば、それは出來ます。これは中世波斯語の「ゼーダ」又は「ザーダ」(〔Za_da〕)で、生れたるもの、子または孫、と云ふ意味の言葉の音に相當致します。語源から申しますれば、梵語の 〔ja_ta〕 と同じき起源を有するものであります。
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 かくの如く准那の二字は波斯語系の言葉の「ゼーダ」又は「ザーダ」の音譯であるとして、然らば「米」の字もやはり波斯語系の言葉の音譯であるかと云ふと、左樣容易くは參りませぬ。漢晉以來唐に至るまで、西域東陲から支那に歸化した外人は多くありまして、其の姓氏は或は出身郷土の名をとり、又は職業官爵等の名から採用したものが多くあります。米姓のものも晉唐の時代にはちらほら歴史上に見受けまするが、さほどに多くはありませぬ。是等の姓名の起源に關して、今は故人となりましたが、私どもの畏敬の友人の一人で、諸君も中學の東洋史で御眤みの桑原隲藏博
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