の時代には、如何に日本の航海者は密教の護持者に對し信頼の念が篤かつたかを推察することが出來ませう。
要するに、陸上の交通にしても、海上の交通にしても、少數のものだけの交通は長途の旅行や久しきに亙る航海など不可能で、大部隊、大商隊、大舟師、大艦隊を編成して交通または通商をせねばなりませぬ。故にこれを統率するものは、商人であると同時に、地理學者でなくてはならず、武人でなくてはならず、立法者でなくてはならず、同時に天文學者でなくてはならず、氣象學者、醫學者である上に、一大信仰を有して居る宗教家でなくてはなりませぬ。陸上では舊約全書にある出埃及記に見ゆるやうな摩西《モーゼス》の樣な人物でなくてはならず、普通世に流布するモハメツトの傳記に於て見るやうな、モハメツトのやうな人物でなくてはなりません。また佛本生經に見ゆるやうな商主即ち商隊を引率する菩薩のやうな人でなくてはなりませぬ。また史記に見えたるやうな帝舜のやうな人でなくてはなりませぬ。
海上ではホーメロスの詩に見えて居る希臘軍の將帥のアガメムノーン、近世ではコロムブスの傳記、ラ・ベルイスの傳記、乃至カピテン・クツクの傳記に見えるやうな近代
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